これはシミュレーションを行う際に最も重要な事項となります。

この選択を誤ると全ての計算結果がおかしくなってきます。UniSim Designには、38種類の物性推算方法が内蔵されており、

  • EOS型 (状態方程式型) ・・・・Peng RobinsonやSRKなど
  • 液活量型・・・・・・・・・・・・・・・・WilsonやNRTLなど
  • Vapor Pressure型・・・・・・・・・・アントワンなど
  • その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ASMEスチームテーブルなど

などがあります。

どの物性推算法を選ぶのかと言うのは、一概には言えませんが、多くの場合は、

  • LNGのような軽い炭化水素の場合: Peng-Robinson
  • 石油などの場合: Peng-Robinson, SRK
  • 水に溶解するもの、極性が強いもの (液液平衡がある場合): NRTL
  • 水に溶解するもの、極性が強いもの (液液平衡がない場合): NRTL, Wilson

などが使用されています。

いずれにしても、シミュレーション結果と実測値・文献値をよく比較して、その物性推算方法で計算してよいのか、十分に検証を行って下さい。

推算方法によってどれだけ違いが出るのかを一例で示します。下図は水-エタノール系のXY線図ですが、NRTL(左図)とPR(右図)で大きく異なります。この場合、NRTLの方が、より実際に近い挙動を再現しています。

このように、系に不適当な推算方法を選ぶと、計算結果が大きく違ってきます。

代表的な推算方法を以下に紹介します。

Peng-Robinson (PR) 及び Soave-Redlich-Kwong (SRK)
状態方程式型は、LNGや炭化水素ガスの推算によく使用されるタイプです。この状態方程式型の代表としてPRとSRKがあります。またここから特定の状態に対応するために多くの派生があります。両方法とも、全ての炭化水素-炭化水素バイナリーパラメータを内蔵し、また多くの炭化水素-非炭化水素バイナリーも内蔵しています。また、仮想成分や内蔵データが無い場合は、自動的に推算するようになっています。

UniSim Designでは特にPRをより広い温度・圧力・状態範囲で適応できるように多くの改良を行っています。

  • Kabadi Danner: SRK派生型。H2O-炭化水素系を改良。
  • Lee Kesler Plocker: BWR派生型。極性物質(水系)に対する改善。
  • PRSV: PR派生型。低圧系や非理想系での推算を改善。
  • SourPR,SourSRK:H2S,CO2,NH3等を含むサワー水への対応。

NRTL
NRTL (Non-Random-Two-Liquid) は、Wilsonの改良版で、VLE、VLLEの計算が可能です。

Wilson
1964年にWilsonによって提唱された液活量を用いるタイプのVLE推算法で、豊富な実験データからほとんどの極性のある液系の挙動を推算できるとされています。

UNIQUAC
1975年に提唱されたUNIversan QUAsi Chemical法の略で、液分子構造からVLE、VLLEを精度良く推参するとされています。